レシピよりも、ピクルス。

ローマの夜は遅い。
大抵夕食が始まるのは早くて午後8時。
平均して午後8時40分くらいから始まる。
その時間でお願いと予約をいれるのだけれど、「ルチアーノ(仮名)がROMAKOと一緒に行く。」と言うだけでいいらしい。
シ、セニョーラで終了、良くてグラッチェくらいは言ってくれるらしい。
それが、お店で顔を合わせた途端予約した男子はそっちのけ、視線とサービスは私に集中。
「ボンジョルノ!ようこそ!ようこそ!どれだけ待っていたか表現しきれないよ、わっはっは。」と、
もう十分シニョリータなのに、バンビーナと言って抱きしめてくれそうな勢いで出迎えてもらえる。
一緒にいる男子がイタリア人なら、僕のバンビーナだよとジョークのひとつも飛ばしそうだけれど、
アメリカ人の男子は、イタリア人はこれだからと呆れていた。
私?もちろん気持ちよ〜く足取り軽〜くお席につかせてもらって、話せないイタリア語を楽しく聞く。
お連れの男子(そんな感じに転換するのだ、本当に。)が席に着くと、
サッとメニューを出すのだけれど視線と笑顔は私に向けられたまま。
ちょっとでも私がお連れ化の男子を気にする素振りを見せても、
「チッチ、彼なら大丈夫。シニョリータのためにとびきり美味しいワインと料理を用意するさ。」と制され、
お連れ化した男子にウインクをして、わかってるよねビームを送ったりしている。
トラットリアでもリストランテでもその傾向にあまり変わりがなく、
お連れ化男子に視線とサービスが集まるのは、チップを大盤振る舞いした時だけだ。
お連れ化男子がそれじゃぁとワインや料理を選び始めても、
「チッチ、シニョリータはこっちの方が好みさ。」などと言われどこまでもこの国のカメリエーレ(ギャルソン)は唯我独尊だ。
そんなお連れ化した男子とカメリエーレのやり取りを尻目に私は店内に座るゲストたちの観察にふける。
本当にため息が出るほどお洒落な二人が多い。
そんなスーツ、あなたとカナブンくらいしか似合いませんってくらいの光沢のある生地で作られたスーツを長い首としっかりとした肩でビシッとではなく、
ラフに自然に着こなしている。
女性は、グラデーションのかかった金髪が顔に少しだけ影を作るように結って、
マットなデコルテを魅せつけるように長過ぎる腕を交差したり重ねたり。
視線を合わせたままワインを口に運び、何かと言えば、すぐ手を重ね、顔と顔の距離は15cmくらいだ。
ふ〜〜〜〜っと、二人の間に漂う空気にため息がでる。
「お待たせ〜。まずはこれからだよ。」と言ったと思う笑顔でカメリエーレがテーブルに置いたのは、
これでもかと積まれた大小色とりどりのオリーブのピクルスや、アンティチョークや小玉ねぎのバルサミコ酢漬けや、ビタミンカラーのピクルスたち。
これをポリポリといただきながら、私もあの二人に負けないくらい熱い空気で楽しむわと隣に座るお連れ化男子をねっとり見たら、
うんめぇ〜とピーナッツを口に運ぶかのごとくオリーブを運び、種をぺっぺと吐き出すアメリカ野郎。
「あんた、自分はイタリア系アメリカ人って言わなかったっけ!!!!」

その後の二人は、グストグストのピクルスを頬張ってご想像してください。
ボナペティート!!!!

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ピッツァの思ひ出。

ピザ大好き!ピッツァと言いたい、ピッツァと。
ローマでは、1カットのピッツァが日本のカップヌードルの同じくらいの金額で買える。
軽く長財布くらいはあるその1カットの大きいことったら!でも生地がパリッパリでちっとも重くなくて、
小腹が空いた時によくデリカテッセンで買っていた。
そんな時は決まって店先に用意された椅子に座ってや、歩きながらだった。
決して平坦ではなく、アップダウンの多いローマは、それでも歩く街だった。
そして食べ終わるのは、なぜだか必ずジェラード屋さんの前でその誘惑にいつも負けていた。
それでも、石畳でパティオみたいな噴水の横に広がるテーブルと椅子に腰をかけて夕日を浴びながら過ごす時間が好きだった。
トマトとチーズの香り、チョコレートの香り、コーヒーの香り。
緑よりも、水のイメージが私には強いローマだけど、その圧倒されるほどの石の世界に魅了され続けた。
目が合えば、シニョーラ、シニョーレ、ボンジョルノ!!!と笑う。
そうかと思えば、これ以上ピッタリできないでしょう〜と思うほどのタイトスカートの深いスリットから、10cmくらいあるヒールをカツカツならし、
ビシッと夜会巻きにアップしたヘアスタイルで足早にすれ違うキャリアウーマンもいる。
目的にまっしぐらな視線は、寝起きの様なゆるい日本人の私には目もくれない。
彫刻刀で作ったでしょって思うほどの鼻の高さは、そのプライドとヒールの高さに比例していると、
ピッツァも頬張りジェラードをベロベロ舐める私は勝手に納得していた。
決して大きくないイタリア人。だけど肩を使って、オーバーリアクションで話す姿は、とても魅力的だった。

そんな思い出があるローマに思いを馳せて、トスカーナのカホリ、トマトソースの『ブルスケッタ』。
このソースを使って、シンプルなピッツァを作る。

ピザ生地にたっぷりと塗り、パルメジャーノレッジャーノを削り焼く。トッピングに、生ハムとバジル。
オーリオサントをたっぷりとかけて!

もうひとつ、シンプルなピッツァを。使うペーストは『ジェノベーゼペースト』。

蓋をパカッと開けると、バジルとオリーブオイル、グラーナパダーノ、にんにく、とにかく、とにかく、ものすっごくいい香りがして困る。
焦る必要なないのに、早く作らなきゃと思う。

ピザ生地にこのペーストをたっぷり塗って、スライスした玉ねぎ、ゴルゴンゾーラとパルメジャーノレッジャーノをこれまたたっぷりと乗せて、オーブンへ。プクプクとペーストが踊り、チーズが沸々と溶ける。クラフト生地のふちがパリっとなって、ますます気持ちが高ぶる。
ルッコラをたっぷりと乗せて、たっぷりたっぷりで。鷹の爪の細い輪切りで、刺激を加えて!

ピッツザが焼き上がるまでは、カンパリオレンジでノドを潤わすのがおすすめ。さぁ!ボナペティート!!!!

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夏から秋へ。

9月の声を聞いた聞いた途端、自分の中で秋風が吹く、
ような気がするのは私だけかもしれないけれど、秋に私の何かが移行する。
肩を出す格好や、つま先を出す靴はもう履くのを止めようと思ったり、
大きな夏の花をコラージュしたプリントや、ビビットカラーの洋服を終わなくちゃと思う。
そして、長袖のTシャツを着てみたりする。
ネイルも深みのある色を乗せたいと思ったりしている。
もう真上から照らされて、ほとんど写らない影に夏を感じることもないのだ。
低く長い影がいつもつきまとい、夜長を楽しみ過ぎて寝不足になる。
だけど夏の暑さは熱さとなって、激しくけたたましく過ごした毎日に疲れた頃秋になって私はホッとしている。
そんな夜長を楽しむためのアイテムのひとつを、紹介したいと思う。
バジルは夏にたっぷり摂ってこそだけれど、ベル・グストにはペーストにされて旨味凝縮の一瓶がある。
その名は『ジェノベーゼ・ペースト』。
この原材料を見て欲しい。
“エクストラバージン オリーブオイル”、“バジル”、“カシューナッツ”、“クルミ”、“松の実”、
“グラーナパダーノ チーズ”、“ペコリーノ チーズ”、“ニンニク”、塩”。
ずらりと並んだ食材のこの緑の魔法がパスタにかかったら、ふわっ、なんてもんじゃない、ぶわっと香りが放たれ、
シンプルだからこそ絶対外せない、見た目の美しさ、香りの良さがダイレクトに伝わるパスタに仕上がる。
・・・と、ここまでは夏仕様。(夏本番に応用編として、前回はポテトと絡ませたレシピを紹介した。)
けれど今回はプラスαして、秋仕様のパスタでいただくのを紹介したいと思う。
その名は『ジェノベーゼボロネーゼ』。
ラップの韻を踏むようなネーミングが楽しい。
ジェノベーゼボローゼ、よう!そう、プラスαはボロネーゼ。
肉肉しさを足すのだ。
秋になると、少しずつレシピに重みを持たせていく。
さぁ!熱を放出した季節から熱をたくわえる季節を存分に味わおう。
夏から秋へは、食欲の秋へでもあるのだから(笑)

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【ジェノベーゼボロネーゼ】(2人前)

 スパゲティ1.6mm … 200g
 にんにく … 1片 
 鷹の爪 … 1本 
 モンターニャ・サクラ … 大さじ2
 白ワイン …大さじ2
 ジェノベーゼペースト … 大さじ3
 ボロネーゼ(ストック) … 大さじ1.5
 塩/胡椒 … 適宜
 イタリアンパセリ … いろどり

 <作り方>
 1.スパゲティは表示時間マイナス2分でゆでる。
 2.熱したオリーブオイルで芽をとってつぶしてみじん切りにしたにんにくと、
   半分に折って種を抜いた鷹の爪を炒め香りがたったら白ワインを加えアルコールを飛ばす。
 3.2にジェノベーゼとボロネーゼを入れ温度が上がったら、茹で上がったスパゲティをいれ
   茹で時間まであおり、塩胡椒で味を整える。 4.器に盛りイタリアンパセリでいろどる。
ボナペティート!!!!!

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オリーブオイルを選ぶ楽しみ。

何度でも書いていると思うけれど、ベル・グストでは3種類のオリーブオイルを扱っている。

フレッシュさとピリっとしたオリーブオイルらしさを感じられる「モンターニャ・サクラ」。
ラベルはちょっといかついのだけれど、甘くやさしい味わいの「ディオメーデ」。
そして保護指定原産地で収穫され、深みとアーモンドの香りを持つ「レ・マンフレディ」。

私はこの3種類を、宴のレシピに合わせて選んで使う。
食在庫の一番前に、いつも鎮座している3本のオリーブオイル。
ちちんんぷいぷい、今日はどれにしようかしら、ってな具合に選ぶ。

さて、そんな食在庫を知る私の愉快な仲間たちも今ではこのオリーブオイルの味を知る面々になっている。
初めは「ここに来ないとこんなことはできないから。」という単純な好奇心で、
仲間たちは3つのオイルを味見し始めた。
彼らの反応は、オリーブオイル3種類に対しての違い以前に“ウマイッ!!!!”だった。
もちろんそれぞれ個性はある、味も香りも違う。
でも、そのどれも素晴らしくオリーブオイルが持つ本来の美味しさにびっくりしていた。
何を隠そう、私もこのオリーブオイルに出会ったとき全く同じ感想をもったひとりなのだけれど。
そして、彼らは自分の好みを探し始める。
またしても私と同じ行動をとる仲間たちが私は可笑しかった。
彼らは、彼らの味覚と嗜好でもってオイルを考査する。
もうすっかり私は聞き役に回り、「レ・マンフレディ」を小皿に注ぎバゲッドと用意したりして、
そっとオイルたちの援護射撃隊長なる。
「ディオメーデ」でベビーリーフやグレープフルーツを使ったサラダとプリモピアットのパスタを作る。
「モンターニャ・サクラ」で刺激的なメインを作る。
料理は科学だと誰かが言い、実験されたものを食うのか?と誰かは皮肉り、
そんな風に考えるのは止めてよと頬張る誰かはすねる。
私はやり取りを横目に見ながら心の中で白状する、「そう。料理は科学なの。」と。

見て触って食すオリーブオイルを選ぶことは、宴を楽しいものにしてくれる。
そうそうスキンケアで締めくくることもお忘れなく。

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【チキンと無花果のタリアータ】
 (1~2人前)
 鶏もも肉 … 1枚
 無花果 … (小)4個
 パルメジャーノレッジャーノ … 80g
 ルッコラ … 1パック
 塩/胡椒 … 適宜
 白ワイン … 100cc
 バルサミコ酢 … 大さじ11/2
 モンターニャ・サクラ … 大さじ3~4
 <作り方>
 1.鶏もも肉を白ワインに20分以上つける。
 2.1に塩、胡椒をし、無花果は皮付きのままオリーブオイルをかけ塩を振っておく。
 3.フライパンにモンターニャ・サクラを入れ、鶏肉は皮麺から、無花果は皮つきのまま転がしながら焼く。
 4.焼き上がった肉を食べやすい大きさに切り、無花果は4等分にし皿に盛る。
 5.4にルッコラとスライスしたパルメジャーノレッジャーノを添え、モンターニャ・サクラと
   バルサミコ酢をまわしかける。

ボナペティート!!!!

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