私はカトリック系の幼稚園に通っていた。
園内には簡素だけれど、幼稚園児の私には十分すぎるほどの教会があって、
神父様やシスターの慈悲深い眼差しが注がれていた。
磨りガラスからうっすらと差し込む陽の光に、十字架にかけられたイエス・キリストが浮かび上がり、
傍らにそっと立つマリア様は哀しげにうつむいていた。
幼稚園の年間行事で一番華やかで、一番大事にされたクリスマスの記憶は私の中でも同様に
一番華やかで、一番大事にしたい行事だ。
最も大人になってからは、小悪魔的にキラキラとしたイベントに姿を変えているけれど、
一番大好きな人と過ごせますようにと祈りることは変わらない。
そういえばあの日のサンタクロースは誰だったんだろう・・・。
さらに思い出をひとつ。
幼稚園はこのクリスマスを祝う、「クリスマスお祝い会」が行われる。
年長さんの園児が「受胎告知」の劇をするのが恒例行事で、園児たちは与えられた役を一生懸命練習をしていざ本番で演じる。
観客は園児のパパとママたちと年下の園児だ。
私はこの恒例行事の劇を観て密かに「大天使ガブリエル」に憧れた。
天女の衣のようなキラキラ光るサテン地のドレス、天使の輪、そして背中を覆う大きな羽。
中でも背中を覆う大きな羽が洒落ていた。
真っ白に染められた本物のような羽毛がびっしりと植えられ、まるで本物の羽のようだったからだ。
そして、きっと衣装に仕込まれているのだろうけれど、天使役が手を動かす度に羽が羽ばたいた。
幼稚園児の舌っ足らずな頭で、一生懸命念じた。
『神しゃま、あにょ羽をつけたいでしゅ。あにょ天使の役をろまこに与えてくだだい。」
それから1年後。
どのように配役が決定されたのかを、もう覚えていないのだけれど、私は念願の「大天使ガブリエル」の役を与えられた。
きっと私のことだから、先生にいつも話していたんだと思う。
そして、役を与えないと何をしてだすかわからないと思った先生が、根負けして決めてくれたんだと思う。
今となっては真相は薮の中だけれど、とにかく幼稚園児のROMAKOが大きな夢を叶えた瞬間だった。
「受胎告知」の一番の主役、マリア様の役を射止めた(?)のは、小さな親友の風(ふう)ちゃんで、
似合い過ぎる大きな目を持つ美人さんだった。
その小さな親友がなりきるマリア様に向かって私の台詞は一言「あなたは神の子を宿しました。」だった。
練習の時は紙の羽をつけ、何度も何度も練習した。
幼稚園の送迎バスの中でも、やさしい風ちゃんが渋々つきあってくれただけかもしれないけれど二人で練習をした。
そして、いよいよ本番の前日、その羽を生やす時がきた。
いわゆるリハーサルってやつで、衣装をつけて通し稽古をする。
あぁ、私はその時のちっちゃーい胸を感激で振るわせたことを一生忘れないだろう。
私の肩甲骨からその羽が生えた。
羽は、今にも羽ばたかんと軽やかにそこに置いてあったのに、見るのとは大違いでずっしりと重く、
私ははっきりと感じる存在に、本当に飛べちゃうんじゃないかと思った。
ピアノ線のような釣り糸のような透明の糸を指にかけ、手と羽がきちんと連動するか確かめ、
天女の衣のようなキラキラ光るサテン地のドレスを纏う。
もちろん、天使の私には輪っかも忘れない。
そうして天使になって、マリア様に告げた。
「あなたは神の子を宿しました。」
私はこうして大天使ガブリエルになった、身長は110cmだったけど。
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【ローストチキン】
チキン … 1羽
塩/胡椒 … 適宜
<スタッフィング>
バジル … 3枝
ローズマリー … 3枝
タイム … 5本
セロリ(葉の部分) … 2本
タマネギ … 1/2個
ローリエ … 6枚
EXVオリーブオイル … 40g
<ソース>
はちみつ … 50cc
粗挽き胡椒 … 大さじ2
バター … 大さじ1
塩 … ひとつまみ
<作り方>
1.チキンをお湯で外側、内側ともよく洗う。
2.水気をよく拭き取る(ここで残っていた血などが取れます。)
3.チキン全体に塩、胡椒を塗り、ハーブをスタッフィングする。
4.耐熱皿にタマネギとローリエを敷き、凧糸でチキンを成形し全体にバターを塗り、乗せる。
5.200℃の余熱で90分焼く。
(※30分おきに、バターを塗る。)
6.焼き上がったら、取り分けソースをかけていただく。
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Buon natale e felice anno nuovo!
ROMAKO の紹介
エッセイスト/料理研究家/フードアナリスト/Jr.オイスターマイスター
<発売中>エッセイ&レシピ『食感シーソー』ROMAKO著/文芸社/1,470円(税込)
『食べることは生きること』という信念を持って、イベント目線で日々の食をエッセイで綴る、簡単で食材の組み合わせに驚きのあるレシピを、ベル・グストの食材を使って提案します。