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翼の消える日

日曜日, 10月 3rd, 2010

2010年9月30日、一年ぶりのイタリアに出発することになった。いつもながらこの旅も、相変わらずハードな予感でいっぱいだ。
ただ、この出発日には、ある特別な想いがある。会社更生の途を歩み始めた日本航空が、おそらくは断腸の思いであったろう(と、思いたい)、イタリア・ローマへの直行便の廃止が決まってのラストフライトの日なのだ。10年にも及ぶわたしのこの便の利用もこれが最後となるわけだ。
陸上スタッフ総出の見送りをうけてのフライトは、滑走路上のアクシデントで、約1時間遅れでの出発となり到着にも遅れは出たが、ローマまでの空の旅は、順風満帆だった。機内のクルーの立ち居振る舞いも、わたしの経験した中でもいちばんと言えるものだった。
ラストフライトをともにした乗客の数は177名。空の上で機長からこんな主旨のメッセージがあった。「険しい道のりではあっても、日本航空は会社の更生という途を歩み始めました。失った信頼を取り戻すために、社員、スタッフ一丸となって邁進していく決意です。どうか引き続き、みなさまのご支援をお願いしたい」。この言葉に、思わず目頭が熱くなった。
機長にこう言わしめた経営の責任の重さと、変わらず、ひたすらその責務を果たそうとする、陰の力を感じずにいられなかった。
このフライトで、イタリアの空から”JAL”の翼が消える。いつの日か、ふたたび一回り大きくなった翼が永遠の都に羽ばたくことを祈りつつ。